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先週の満月は秋らしい見事なものでした。三渓園の観月会に行きそこねました。
不謹慎でしょうが、台風の前に月が満ちてよかったです。
 
そう、先週は弟の誕生日でした。
プレゼントを選ぼうと、店に入るまえ、
弟は空をみて、今年も月が見れてよかったです、といいました。
追って見上げると満月がかかっていました。
去年の誕生日も満月の頃お祝いしましたが、その時は火星のような真っ赤な月でした。
今年の月は青白く、モランディの静物画をほうふつとさせました。
 
その日は2人とも、少し冷たい空気でした。
感情過多な私は理由のわからない波にとらわれて少しいらいらしていたし
普段穏やかな弟もどこかひやりと冷たく、後でわかったことですが、彼自身の問題を抱えていました。
 
個を強調するモランディの絵はぱっと見ただけでは癒されるものではありません。
その絵の周りを540度くらい廻らないと体は温まってきません。
 
弟は村上春樹の短編集を選びました。
中国行きのスロウボートという、私にとっては思い出深く懐かしい本です。
内向きになっているその日の弟にこれだけでは、と思って
古川日出男の「ベルカ、ほえないのか」と迷いましたが、森見登美彦の小説も添えました。
 
会社でスマイリ―君と呼ばれているらしく、一見人当たりの良い彼ですが
自分で作ったバランスのなかで今少し、窒息気味のようです。
 
たとえば、工学出の弟が描く図形は常に整っています。
丸をかきましょう、といったとき、見切り発車で手書きの丸をとりあえず書く私と
コンパスを用意して念のためトレース紙も用意してから書く弟、そんな違いです。
ふたつ、みっつと図形を重ねていけば、出来上がった図は全く違うものになります。
 
弟はおそらく、生活もそういう風に設計しているようです。
バランスどころか常にものごとの比重が崩壊した日常をおくる私からすると
彼の「はみ出さない」生活がなんともうらやましい限りですが
そして実際、弟も私のことを心配しているようですが、
自分自身の生活に対しては悩んでいるようです。
 
弟の思い出のかたわらにはいつも月があります。
生まれて初めて、私におぼろ月という言葉を使ったのはまだ8つか、9つの頃の弟でした。
彼が、こういう生き方をするようになったきっかけを私は知っています。
お姉さんは好きなように生きていいんですよ、と弟はいつも言いますが
私も彼に対して、本当はいつもそう言いたいのです。
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1980/07/11
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冬も緑の葉っぱがしげる、東京都内の街路樹のしたを走る通勤模様を中心に、
自転車に関するヨシナシゴトを書いています。

たまに無謀なロングライドを試みては返り討ちにあっています。



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そのほか 、
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